杜仲を種から育てる

杜仲の栽培

杜仲の木は雄雌異株で雄花と雌花があります。自社農園には雌の成木が2本あり、沢山の種を実らせます。

奥に見える大きな木が種をつける成木です。杜仲の木は春先に花を咲かせ種をつけ、秋を迎えるころに落葉と共に地面に落ちます。

画像の中央部にあるへら状の形をしたものが種です。杜仲の種の発芽率は非常に悪く人工的に発芽させることは難しいとされてますが、それは杜仲の木が沢山の種を実らせる理由の一つかもしれせん。

私が長野県の箕輪町で杜仲の仕事に携わる以前は、自社では杜仲の苗を購入し栽培していました。杜仲を種から栽培しようと思い立ったきっかけは、定植した杜仲の苗の近くに沢山の発芽した芽を発見したことでした。自然に落ちた種が畑で発芽するのであれば、自分たちでも種から育てることも十分可能だと思いました。

情報取集と計画

先ずは、情報収集のため伊那谷で古くから杜仲を栽培している生産者の方々に、種を発芽させるコツを伺いに行きました。はっきり分かった事は、単純に種を蒔いただけではダメだということです。

栽培に必要な土づくりは当然のことですが、高い確率で確実に発芽させるためには事前準備とノウハウが必要とのことで、具体的なノウハウを聞けば快く教えてもらえましたが、それは長い経験と苦労と共に培われた知識という財産。簡単に教えてもうことは失礼だと思い、先ずは自分たちでチャレンジしようと心に決めました。

それから、生産者の方から伺ったお話と過去の文献、私達の畑で杜仲の種が発芽した状況と環境を元に、どうすれば上手く発芽させられるかシミュレーションしました…

答えはシンプルに

そこで導き出した答えは単純で、苗の環境と同じ環境を作ろうと思いました。

杜仲の苗は小さいうちは雑草の勢いに負けてしまい成長が悪くなったり、定着しないことがあります。そこで、自社農園では少しでも環境負荷を少なくするため、農作業時に発生する杜仲の枝などを焼却せずコンポストにするためチップにしていたので、そのチップをマルチにしていました。

実は、落ちた種が沢山発芽していたのはチップマルチをしていた場所なのです。自然界では落ち葉や朽ちた木など沢山の有機物が地表を覆ってます。当然の事かもしれませんが、その環境が杜仲の発芽に向いていると考えたのです。

杜仲の種を播種

幸いなことに杜仲の種は自社農園でいくらでも手に入るので、播種する前年に畑で採取しておきました。

伊那谷では杜仲の播種を4月上旬頃に行います。土づくりは播種の3週間ほど前に、籾殻、石灰、米ぬか、もみ殻堆肥、油粕、放線菌など有機JASに対応している資材を使用し行いました。

発芽しない種もあることを前提に一か所に2~3粒の種を20㎝間隔で埋めていき、計画通りチップでマルチすることで発芽した圃場の環境を再現しました。

今思い返すと、成長した苗を移植することを考慮し、60㎝くらい間隔をとるべきだったと思います。それと一ヵ所で複数発芽した場合は、成長の良い苗だけを残し間引かないと、翌年移植するとき根を傷めてしまう恐れがあるので、躊躇しないで抜くべきだったと思います。

感動の発芽

いざ播種をすると、無事に発芽してくれるか気になってたまりません。毎朝、畑の様子を見に行きました…生産者の方にその話をしたら大笑いさせるほどです。

これまた不思議なことで、私の心配を煽るかのように成木の畑では自然に落ちた種が発芽しているのに対し、播種した種はなかなか発芽しないのです。やはり杜仲の種を発芽させるのは難しいのかなと思いながらも、自分でも呆れるほど発芽の確認に通い詰めました。

圃場の草刈りも始まった4月の中旬、播種した圃場を隈なく確認していると…ようやく杜仲の発芽を確認!!

この感情は何なんでしょうか…種が発芽しただけのことなのに込み上げてくるこの喜びと感動は…まだ若かったころ上司に「生産の喜び」という話を飽きるほど聞かされましたが、正にこういう事なんだろうと再確認しました。

杜仲は双葉で発芽し四つ葉へと成長します。

これは私の主観になりますが、露地栽培で種から苗を育てるときに重要なことは、杜仲に合った土壌づくり、こまめな除草と夏場の水やりを欠かさないことだと思います。発芽したての杜仲は、ある程度根を伸ばし成長期に入るまでは雑草に埋もれてしまいます。実験的にあまり除草しない畝を作り、苗の成長を確認しましたが、その結果は一目瞭然でした。

苗の成長

発芽した苗は双葉から四つ葉になり、夏を迎えるころすくすく成長していきます。

この年は前年に比べ雨量はありましたが、毎朝水やりに行きました。というのも伊那谷の夏は本当に暑いのです…冬は氷点下二桁の日もあるような場所ですが、夏の日射量は沖縄に匹敵するほど。

成木になれば、よほどじゃない限り水やりはしませんが、若い苗はそうはいきません。Instagramでも投稿しましたが、とにかく除草と水やりを徹底しました。

秋を迎えるころには立派な苗に

杜仲葉の夏収穫を終え、秋を迎えるころには小さかった苗も1メートル近く成長しました。想像以上に成長した苗を見て改めて感じたことは、当たり前のことかもしれませんが、手をかければしっかり育つというこです。

苗を種から育てて重要だと感じたことは以下の内容になります。

とにかく除草、そして夏場の水やり。

②種を蒔く時は、あまり深く埋めず通気性と保湿性のある環境にする。※チップマルチはお勧めです。

③密集した苗は間引く。

これは余談になりますが、杜仲は肥料食いといわれます。苗を育てる土壌は少し栄養過多でも良いかもしれません。

この年育成した苗は、翌年に定植しました。無事に成長すれば、4年後には収穫ができるようになります。

お客様に美味しい杜仲茶をお届けできる日がとても楽しみです。

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