長野県の箕輪町で杜仲を栽培している自社農園では、環境負荷が低く自然にやさしい循環型の農業を目指しています。
コンポストの設置

その取り組みの一環として農地にコンポストを設置し自家製の肥料づくりをしています。
というのも、杜仲茶の原料となる杜仲の木を栽培すると沢山の有機性の廃材が発生します。
杜仲葉を収穫するためには、毎年たくさんの枝を切る必要があり、自社農園では春の剪定の時期になると、軽トラックで何十回も運搬するほどの量になります。
その大量の枝も、ただ捨てるのではなく、できるだけ循環させて畑の力に変える。
そんな思いから、自家製のコンポストで時間をかけて堆肥化し、畑に戻す取り組みをしています。

剪定した枝は、粉砕機で細かなチップにします。

細かく粉砕した杜仲のチップと、放線菌、もみ殻、米ぬかなどを混合して発酵させてます。
本来、発酵して肥料になるまでには、相当な時間を必要としますが、幸いなことにコンポストを設置している農地は山の麓にあり、カブト虫など多くの生命の助けもあり半年も経つと中の方は殆ど分解されます。
ウッドマルチとして再利用
また、細かくした枝はビニールマルチの代用として杜仲の苗の栽培に利用しています。

前回もお伝えしましたが、杜仲の苗はある程度成長するまで、どうしても雑草の勢いに負けてしまうことがあります。また、土の乾燥を防ぐために、ある程度の保湿も必要です。
そのため、一般的には「ビニールマルチ」と呼ばれる黒いビニールを地面に敷いて、雑草対策や保湿を行います。
ですが、私たちはその代わりに、粉砕した杜仲の木(ウッドチップ)をマルチとして使用しています。
このウッドチップには、
●雑草を生えにくくする効果
●土壌の乾燥を防ぐ保湿効果
●土に分解されることによる、土壌改良効果
といったメリットがあります。
杜仲の木を育てながら、その素材を無駄なく活用できる、環境にもやさしい方法として積極的に取り入れています。
この方法は杜仲に限らず、実はりんご畑など果樹園でもよく見かけます。剪定した枝をチップにして、畑にまいている風景を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
こうした「木のチップを使ったマルチ」は、自然の循環を活かした方法で、雑草対策や保湿だけでなく、枝の有効利用にもなります。分解されれば土の栄養にもなり、一石二鳥です。
化学肥料・化学合成農薬を使用しない
現在、MinowaTea Gardenでは、有機JAS認証の取得申請を進めており、自社農園ではすでに有機栽培の基準に沿った栽培を行っています。
使用している肥料は、有機JASに対応した肥料に加え、自家製のコンポストも取り入れています。
また、除草剤などの化学合成農薬は一切使用していません。
杜仲の生命力と自然の力を活かしながら、安心して飲んでいただけるお茶づくりを目指した農園づくりに日々奮闘しています。

この写真は、土壌改良を目的に、もみ殻と放線菌などの微生物を施したときの様子です。
こうした工夫によって、土が元気になり、微生物や小さな生きものたちも活発に活動するようになります。
そのおかげで、夏の杜仲畑は、たくさんの命が育まれ、とてもにぎやかになります。
見えないところでも自然の営みが広がっていて、畑の中がまるでひとつの小さな生態系のようです。

耕作放棄地の再生と休耕地の有効活用
このお話も、第一回目の投稿でも触れた内容になりますが、
Minowa Tea Gardenでは、これまでに耕作放棄地の再生や休耕地の有効活用にも積極的に取り組んできました。
これまでに、耕作放棄地となってしまった杜仲畑を切り戻しや移植によって再生した場所が4ヶ所。
さらに、新たな杜仲の苗を植えるなどして、合計14ヶ所の休耕地を杜仲畑として活用しています。
ただ畑を増やすだけでなく、手つかずだった土地を少しずつ整え、もう一度命がめぐる場所としてよみがえらせてきました。
こうした取り組みは、地域の活性と保全にもつながると考えています。

次の世代へ
箕輪町で始まった杜仲茶づくりも、私たちMinowa Tea Gardenで三代目となりました。
かつては、長野県伊那谷が杜仲の一大産地として知られていた時期もありましたが、現在ではその面影はほとんどなく、わずかに残った数人の生産者が細々と作り続けているのが現状です。
そんな中、私には一つの夢があります。
それは、箕輪町の杜仲茶づくりを、次の世代へとつなぐことです。
この美しい伊那谷の大地に、杜仲の畑を残し続けたい。
自然とともにあるこの仕事を、未来の世代にも受け継いでもらいたい。
その想いを胸に、日々畑に向き合っています。

そしてもうひとつ、私たちには目指していることがあります。
それは、この杜仲茶を、伊那谷を代表する名産品に育てていくことです。
かつてのように、伊那谷が杜仲の里として知られる日がもう一度訪れるように。
地域とともに歩み、誇れるお茶づくりを続けていきたいと強く願っています。
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