
長く厳しかった伊那谷(いなだに)の冬もようやく終わりを迎え、待ちに待った春が訪れました。
私たちの自社農園がある長野県箕輪町も、春の陽気に包まれはじめています。
箕輪町は長野県の南部、伊那谷に位置しています。冬は厳しい寒さに見舞われますが、夏には驚くほどの暑さとなり、日照時間はなんと沖縄を上回ります。谷とはいえ標高が高く、四季の移ろいがとてもはっきりしている地域です。
長く厳しい冬の終わりをつげるのはフキノトウ

3月末、まだ肌寒さが残る中で、杜仲の畑にフキノトウが顔を出します。その姿は、春の訪れを告げる使者のようで、畑の風景に新たな命の息吹を感じさせてくれます。
それでも、心待ちにしている春は足踏みし、3月末まで雪の日があります。

春を彩るスミレ
4月に入り、高遠の桜が見ごろを迎えるころ、杜仲の畑にはスミレやイヌフグリが咲き乱れます。



この花を見ると本格的な春の訪れを感じ、いよいよ杜仲の芽吹きも始まります。
朝露に濡れた若葉が、そっと土から顔をのぞかせるその瞬間を見つけるたびに、冬の間じっと力を蓄えていた命の鼓動が、ようやく動き出したような気がします。
杜仲の芽吹きと杜仲の花
4月も半ばを過ぎると、杜仲の発芽と芽吹きが始まります。

注意深く観察しないと気づきませんが、芽吹きとともに、次の世代のためにたくさんの花を咲かせます。

杜仲茶の原料となる杜仲葉を収穫するために剪定された木々には花が咲かず、その花自体も控えめで見逃してしまうほど地味なものです。

けれど、だからこそ、そのひっそりと咲く姿を見つけたときの感動はひとしおです。
ほんの少しだけ目線を下げ、時間をかけて向き合えば、自然はそっと大切な瞬間を見せてくれるのだと、改めて気づかされます。
杜仲畑は山菜畑
春の杜仲畑は、まさに山菜の宝庫です。
3月にはフキノトウやナズナが顔を出し、続いてノビル、三つ葉、わらびなど、次々と春の味覚が姿を見せてくれます。畑を歩くだけで、足元に小さな春を見つけられるのです。



自然のリズムに寄り添いながら、その移ろいを五感で感じられる毎日は、とても贅沢な時間かもしれません。目で春を見つけ、耳で鳥の声を聞き、鼻で土や若葉の匂いを感じ、手でやわらかな芽を摘み、舌で春を味わう。

こうした体験を通して、自然とともに生きる喜びを改めて感じています。

そんな穏やかな春の陽気も、実は束の間。
伊那谷に本格的な夏が訪れるのは、あっという間です。
日差しはどんどん強まり、畑の気温もぐんぐん上昇。灼熱の夏が、すぐそこまで迫っています。
そして、夏といえば…雑草との戦いの始まりです。

どこからともなく現れて、あっという間に畑を覆い尽くしてしまう雑草たち。
春の山菜の喜びから一転、夏は忍耐と根気の季節。
でも、だからこそ、収穫のありがたみが一層深まるのかもしれません。
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